お堀の向こうへ鳩は飛ぶ
第一信
往復書簡
吉行 和子
↓
冨士 眞奈美
さて、私たちのなが~い付き合いに新しい時間を提案して下さり、こんな喜ばしい事はありません。銀座百点サマ、ありがとうございます。
しかし、さて、なのです。私はコロナ禍以降、すっかり閉じ込もり生活になってしまい、いったい何を書いたらいいのやら。「どうしよう?」と、外堀の向こう側の町に住む冨士眞奈美に電話すると(彼女はいまだメールもLINEも受け付けません)、「何言ってるの、思い出すことはいっぱいあるでしょう、恋人が死んだ話とか」と簡単に言われてしまいました。
えッ、そりゃだいぶ死んだけど、とかぐずぐずしているうちに〆切が近づき、さて、となりました。 |