|
舌町そだち
……第二話
池波 志乃
節分と言えば、全国的に恵方巻が主流になってしまったが、私はやっぱり「福豆」に「鰯の頭」のほうがピンとくる。
家は下町の(借地だが)一軒家。隣との間には通路程度の空き地があった。まずは、「柊鰯(ひいらぎいわし)」の用意をする。あのチクチクで痛い葉の枝に、焼いた鰯の頭だけ刺したヤツを門口の柱に釘を打ってひっかける。鰯の臭いで鬼を寄せ付けないためだ。鬼が来るのは夜中なので、暗くなってから家の雨戸を開けて、父が枡に入った豆を外に向かい『鬼は外!』と言って撒き、母がすぐにピシャッと雨戸を閉める……のだが、建付けの良くない古い木製の雨戸は閉めるにも工夫が必要なやつなので、ピシャッではなくガタガタッと。 |