一九九九年創業の銀座夏野は箸の専門店。箸はもちろん、箸置きや漆器などが驚くほど並びます。
「箸は神様と自分をつなぐものとされ、昔からの縁起ものです。お祝いにはもちろん、かさばらないので贈りものにも喜ばれますよ」とは副店長の宮嶋寛和さんです。
みなさんが普段から使っている箸ですが、その産地をご存じですか。実は現在、国内でもっとも大きい産地は福井県小浜市といわれており、小浜市若狭の箸は、全国の約八割程度を占めるとされています。銀座夏野では小浜市でつくられた若狭の箸はもちろん、日本各地の産地を訪ねて買いつけ、その数約三千種類以上。希少な品も含まれています。
目で選んだら、手に取って使い心地を試してみましょう。箸は毎日使うものだけに、好みが分かれるもの。経験豊富なスタッフの助言もあり、ご自身の手になじむ一膳が見つかること、請け合いです。
新たな試みとして、産地とともに、特色ある箸も開発しています。
「新米の時季に“白米箸”をどうぞ。お米をおいしく味わえるように工夫しました」と宮嶋さん。
長野産の木曽ヒノキを木地に使っているとのことで、持つとまず軽さにびっくり。米粒の食感を楽しめるよう口当たりを重視し、漆を丹念に塗って表面の滑らかさを追求しました。
「八角形の箸も人気です。多角形の箸は滑りにくいと好評ですが、中でも八角形は丸に近く、指にあたる感触がやわらかいのです」
十月十八日から三十一日までは「JAPAN TRADITIONAL CRAFTS WEEK」で、秋田県・角館の樺細工の箸や茶筒などを販売予定。サクラの樹皮の美しい模様やツヤは、歳月とともに魅力を増します。
産地と食卓の橋渡しを続けて四半世紀。“食欲の秋”を、さらに満喫したいなら銀座夏野へ。
(撮影:大森ひろすけ) |