明治十八年創業の天國は今年で百四十一年目を迎える天ぷらの老舗です。創業のころ、天ぷらはファストフードのような存在。天國も屋台から始まり、揚げたはしから客が指でつまんでサッと食べるといういなせなスタイルでした。
大正十三年には八丁目銀座通りに店を構え、二〇二〇年に同じ八丁目で三筋東に入った通りに移転しました。
現在、店は三フロアに分かれ、一階は天丼や天ぷらの盛り合わせが中心の“銀座天國”。二階はカウンター席のみの“銀座天國栞(しおり)”、三階は和食の“ゆうづつ”です。
一階の“銀座天國”の看板メニューは天丼です。「天國の天丼は、天ぷらを継ぎ足しの丼タレにくぐらせて作るのが特徴です。タレには、天ぷらの魚介や野菜、ごま油の旨味が詰まっていて、独特のコクがあります。そこに天ぷらをくぐらせることで余分な油が抜け、代わりにタレが天ぷらにしみこむので、旨味たっぷりに仕上がるのです」とは露木佐瑛子さん。昨年五代目を継いだ若き店主です。
二階の“銀座天國栞”では職人の熟練の技を見ながら、カウンターで一点一点揚げたての天ぷらを楽しめます。「一階の天ぷらがタレに合う厚衣なのに対し、こちらでは逆に薄い衣で素材の旨味を活かしています」。
三階の“ゆうづつ”では伝統を踏まえながらも形式に捉われない、天國ならではの和食を楽しめます。
手軽なランチから接待や記念日などの会食にまで使える店。老舗の名店は、ぜひ覚えておきたい重宝な一軒でもあります。
ちなみに、露木さんが今取り組んでいるのは天ぷらの冷凍。
「冷凍技術が進んでいるので、店そのままの味を遠方の方にもお届けできるならと始めました。ただ、解凍するときに油が出てしまって、まだ模索中です。実現できたら、とてもうれしいです」 |