銀座維新號は、明治三十二年に神田の地で創業しました。上海に近い港町、寧波(ニンポー)の味がベースの本格中国料理は素材を生かす味つけで、日本人の口にも合い、多くの顧客を獲得してきました。
銀座に店を移したのは、昭和二十三年のこと。戦後の食料難の中、大切に保存していた干し貝柱を活用しようと考案したのが、今では維新號の名物料理として親しまれている、饅頭「肉まん」でした。干し貝柱からだしをとり、挽いた豚肉と香味野菜を合わせた餡(あん)を、ほんのり甘みのある生地に包んだ、ふっくらと大きい肉まんは、たちまち人気になったとか。
「肉まんのイメージからか、気軽に入れる店として、お昼どきは近隣にお勤めの方もよく利用されますね」と話すのは、四代目の鄭彬(ていあきら)さん。
十一時半から夜までの通し営業で、ランチタイムのセットメニューは午後四時まで提供しているのも、商店勤めで休憩が不規則な人には好評なのです。
四年前、彬さんが店を継いでから注力してきたのは、ランチのセットメニューの充実です。平日は、肉まんかあんまんを選べる「お饅頭セット」をはじめ、「麻婆豆腐セット」、「飲茶セット」などが加わりました。土日・祝日には、手づくり点心つきの「ホリデーランチセット」を三種類用意しています。
アラカルトのメニューからは、長年親しまれてきた名物料理を紹介します。寒い時期にうってつけの「なべそば」は、十数種類の具材を煮込んだあんをかけた麺料理で、土鍋に入れて提供。アツアツのうちにほおばれば、体の芯から温まり、お腹も心も満たされます。
忘年会、新年会用のプランもあり、十一月から利用可能です。
明治から令和へ変わらず愛されてきた維新號には、心まで温まる料理があるのです。
(撮影:大森ひろすけ) |